業者に屋根塗装をお願いすると、普段では聞きなれない専門用語がたくさん出てくることがあります。その屋根塗装における専門用語のなかで、住宅の状態にかかわるとされているのがタスペーサーという道具です。
この記事ではこれから屋根塗装をする人のために、タスペーサーの意味や役割、なぜ屋根塗装に使われるようになったのかなどについて解説します。
タスペーサーの意味と役割
タスペーサーとは
タスペーサーとは、縁切りをするための道具で、屋根塗装をした後に屋根の継ぎ目の中で固まっている塗装を剝がす工法になります。
タスペーサーの役割
タスペーサーには屋根と屋根の間に差し込むことで空洞を作る役割があります。屋根のタイプには日本家屋でもっとも使われる瓦屋根以外に、新しく開発された薄型化粧スレート屋根があります。
薄型化粧スレート屋根を塗装をすると、どうしても瓦が薄いために継ぎ目部分に塗装が入り込んでしまって固まってしまいます。
タスペーサーがなかった時代は、カッターナイフで少しずつ削って元の状態に戻していましたが、カッターの場合は薄型化粧スレート屋根を傷つけてしまうだけでなく、カッターナイフの刃も薄いために屋根の間に固まった塗料が残りやすいという欠点があります。
タスペーサーはその欠点を克服するために開発された道具であり、薄型化粧スレート屋根同士の間に隙間なく入り込むことができます。差し込んだ後に、少しずつ動かすことで固まった塗料をきれいにはがすことができます。
屋根塗装へのタスペーサーの必要性
通気性をよくするためにタスペーサーで塗装を剥がす必要性があります。従来の屋根は厚みがあってもくぼみがあるため、しっかりと並べてもくぼみが通気性をよくしてくれました。
しかし、薄型化粧スレート屋根は軽量化するために、厚みだけではなくくぼみもなくしているため、塗装をして固まると空気の抜け道がなくなってしまいます。空気の抜け道がなくなることでカビによる腐食が起きやすくなってしまうのです。
日本は海に囲まれた島国であり、東南アジア周辺の海域から暖かく湿った空気が入り込みます。その湿った空気と大気中の冷たい空気がぶつかり合うことで、1年を通して多くの雨が降ります。
雨が降る影響のなかで厄介なのが、大気中の水分量が増える湿気です。湿度70パーセントを超えると多湿という状態になり、この状態は多湿を好むカビにとって過ごしやすい環境になります。
従来の瓦屋根はくぼみがあることで通気性があり、湿気がこもりにくいのですが、薄型化粧スレート屋根はくぼがないためカビの繁殖を防ぐために設置する際に隙間を作って通気口を作る必要があります。
その通気口を塗装で固まった状態にしておくと、湿気の逃げ道がなくなってしまうことでカビが繁殖し、家の耐久性を著しく低下させてしまいます。そこでタスペーサーを使って固まった余分な塗装をはがすことで、空気の通り道となる隙間を作り、カビの繁殖を防ぐことができるのです。
タスペーサーにかかる費用の相場
タスペーサーを行うメリットとしては、コストが安くなるという点です。従来のカッターナイフで削る方法だと、屋根を傷つけないよう慎重に行う必要があるため、相応の工数がかかってしまいます。
屋根塗装の費用は原価だけではなく、工数などによる人件費等でも変動するため、平均で5〜6万円以上がかかってしまいます。
その点、タスペーサーは差し込んで通気性を作る道具なので、特別な工法もなく時間がかかりません。タスペーサーを活用する場合には、必要コストとして一枚当たり500円〜1000円施工することができるため、30坪程度の住宅だと2~5万円程度で施工ができます。
まとめ
今回は屋根塗装におけるタスペーサーの必要性や役割についてお伝えしました。
スレート屋根は塗装後に屋根同士が乾いてくっついてしまうということがあるため、従来では通気性を保つためにカッターナイフで縁切りして対処していました。
タスペーサーは差し込むだけで済むため工数がかからず、費用がかからない工法であるため、職人にとっても施主さんにとっても最適な方法だといえるでしょう。